口腔外科
口腔外科とは
口腔外科は顔面ならびにその隣接組織の外傷、炎症、嚢胞、腫瘍、奇形、変形などを手術で治す診療科です。
当院における取り組み
当院では、口腔外科認定医・専門医・指導医のDrが在籍しており大学病院の口腔外科に準ずる設備・器具をそろえています。今まで大学病院へ紹介されるケースの症例も、ほかの歯科医院から紹介いただくことも多くあります。
上記の疾患の一部は、患者様の全身管理の点から大学病院へ紹介させていただくこともありますが、当院理事長は東京歯科大学顎顔面口腔外科学講座の臨床教授を務めており、十分な連携システムをとっております。
また、侵襲の比較的大きな処置に関しては、術後疼痛、感染予防のため入院が必要になることもあります。当法人の本院には入院施設もあるため、当院で診断まで行い、処置は大学病院もしくは本院での手術も行えるため幅広い治療計画を行えます。
対象となる疾患
親知らず
永久歯の中で一番最後に生えてくる歯を親知らず(または第3大臼歯や智歯)といいます。
一般的に20歳前後に生えてきますが、一生埋まったままの方や先天的に親知らずが無い方もいらっしゃいます。
親知らずがまっすぐに生えるスペースがなく、横向きになっていたり、部分的に粘膜に埋まっている状態の場合、前の歯との隙間から汚れがたまり、腫れたり痛くなったりすることがあります。
炎症を起こした親知らずを放っておくと、炎症が波及し大きく腫れがでたり、一本手前にある第二大臼歯や、親知らずの根っこの近くを通る下歯槽神経に悪影響を及ぼす可能性が出てくるので、現在のご自身の状態を把握しておくことは重要となります。
親知らずは舌神経、下歯槽神経といった周囲組織の知覚神経との距離が短いため、抜歯時に神経損傷を起こし苦悩される患者様もいらっしゃいます。当院では事前にレントゲンで確認を行い、必要に応じCT撮影行う事でリスクを把握し、抜歯の方法についてもご説明させていただきます。
顎関節症
顎関節症とは、顎を動かす筋肉や、顎の関節が正常に機能しない症状を指します。例えば、口を開けた時に顎が痛い・異音がする、顎が大きく開かないなどが起こることです。
原因は、日常生活での生活習慣、ストレス、かみ合わせ、外傷の既往など多岐にわたる為、患者様からしっかりとお話しをうかがうとともに、あごの周りの筋肉の状態、骨の形態、動き、かみ合わせを診察し、考えられる原因を突き止め、治療計画を立ててまいります。
治療法は、経時的に変遷してきているため、病院によって治療法はことなってきます。新しい情報をアップデートし、患者さまに合わせた治療を提案し行っていきます。
顎顔面領域の外傷
顎顔面領域の外傷には、受傷部位により口腔軟組織における損傷、歯牙の損傷、および顎骨骨折があります。単独の歯の破折や脱臼の場合は一般歯科医院で治療も可能ですが、顎骨骨折や顔面の裂傷の治療は専門性のある病院で受傷後早期の治療が必要です。
当院で可及的な対応は可能ですが、骨折の範囲、部位によっては静脈鎮静での処置が必要となります。
歯性上顎洞炎
上顎洞とは鼻腔周囲に存在する副鼻腔のうちのひとつで、鼻腔の左右に位置します。上顎洞は大きな空洞で最下底は上あごの歯の根っこと近接します。歯性上顎洞炎は歯が原因で起こる上顎洞部分の炎症で、虫歯や歯周炎を治療せず放置した場合に、炎症が上顎洞まで波及する病気です。
症状には急性と慢性があり、通常虫歯がある側の片側に起こります。急性では患側の眼窩下部の腫脹、疼痛、近傍の歯牙の痛み、挺出感、眼痛、鼻閉感、鼻汁などが突然現れ、慢性では明確な症状に欠けることも多く、軽度の片頭痛、頭重感、鼻閉感、歯牙の違和感などが生じる傾向があります。両側に症状がある場合は鼻性上顎洞炎の可能性もあるのでその場合は耳鼻科での治療となります。歯性の場合は、原因の歯の治療もしくは抜歯しない限り治癒しないため、正しい診断と早期の治療が必要となります。
粘液嚢胞
粘液嚢胞とは、口腔内にできる丸くて軟らかく、半丘状に粘膜がぷくっと膨れ上がったような腫瘤(しゅりゅう)です。粘膜と同じような柔らかさで硬くならず、周りの粘膜と同じような色で、粘膜が傷ついた直後でない限り痛みもありません。成り立ちとしては、外からの刺激(間違ってかんでしまった等)で唾液をつくる組織から唾液の出口までの筒状の通路が破れることで周囲の組織に唾液がたまってしまい、それが袋状になった病気です。
主にかんだりしてしまうことの多い、下唇の粘膜や頬の粘膜に好発します。自然につぶれたりすることもありますが、できたりつぶれたりを繰り返すうちに袋状の病気はかたくなってきてつぶれないようになります。そうなると摘出しない限りよくなることはありません。
舌や口唇の腫瘍
口腔腫瘍は、他の臓器と同様に大きく良性腫瘍と悪性腫瘍(口腔がん)に分けられます。
良性腫瘍には、主に顎骨に生じる歯原性腫瘍と、主に軟組織に生じる非歯原性腫瘍があります。
良性腫瘍に関しては、大きさによっては当院での処置が可能です。病理組織検査も行うため、しっかりとした診断が可能となります。
一方、悪性腫瘍である口腔がんは生命に関わる重大な疾患であり、再発や転移の可能性があります。早期発見、治療が予後に大きくかかわる病気です。当院での治療はできませんが、行えることとしては早期発見です。経験豊富なDrによる診察、状況によっては細胞診という、表層の細胞をとって検査することで、良性疾患か悪性疾患かのスクリーニングを行うことが可能です。口内炎が治りにくい、口の中に膨らんで広がってきているものがあるなど、お気づきの点があれば早めの受診をお勧めします。もし万が一、悪性腫瘍が発見された場合は、迅速に大学病院と連携をとり早期治療へ移せるシステムも構築しております。安心してご相談ください。
歯牙移植
虫歯や歯周病などで抜歯を必要とする場所に、自分のほかの歯を抜いて移植する治療法です。
移植する歯は主に親知らず、第二大臼歯、歯列からはみ出ている第二小臼歯などです。抜歯した場所に新たな歯を入れる治療にはインプラント治療がありますが、歯牙移植では人工物ではなく自分の歯を移植するため、感染の可能性がほとんどなく、歯周組織がすべて揃っており骨がつくられるので、移植後に矯正治療を行なって歯並びを改善することもできます。
人工物であるインプラントではなく、ご自分の歯を移植することは、その後の患者さまの生活や歯の健康を考えるととても有効です。そのため、歯を失っても歯牙移植ができる可能性のある方には、インプラント治療だけでなく歯牙移植も選択肢のひとつとしてご検討いただいています。
歯牙再植
外傷や事故などで抜けてしまった歯や、治療をしても良好な結果の得られない歯を一度意図的に抜き、再度歯を元の場所に戻す治療法です。特に、歯の神経の治療をしてもなかなか痛みや腫れが治まらない場合、歯根の中の神経を取りきれなかったことで菌が残ってしまっているケースがよくあります。そのようなケースでは、歯を抜くことで根の先から逆に治療することが可能になるので、痛みや腫れを抑えることができます。
歯牙再植では、顎の骨に歯を固定する役割のある歯根膜も同時に再植できるので、健康な歯と同じような噛み心地を得られます。